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『パッドマン 5億人の女性を救った男』感想(ネタバレ)

あらすじ・キャスト・スタッフ

『パッドマン 5億人の女性を救った男』

2018年/インド/137分
原題:Padman

監督:R・バールキ
脚本:R・バールキ
撮影:P・C・スリーラム
音楽:アミット・トリベディ

キャスト
アクシャイ・クマール、ソーナム・カプール、ラーディカー・アープテー、アミターブ・バッチャン

あらすじ
インドの小さな村で最愛の妻と新婚生活を送るラクシュミは、貧しくて生理用品が買えず不衛生な布を使用している妻のため、清潔で安価なナプキンを手作りすることに。生理用品の研究とリサーチに明け暮れるラクシュミは、村人たちから奇異な目を向けられ、数々の誤解や困難に直面する。そんな彼の熱意に賛同した女性パリーの協力もあり、ついに低コストで大量生産できる製造機の発明に成功。農村の女性たちに、ナプキンだけでなく、その製造機を使って働く機械も与えようと奮闘するラクシュミだったが……。

映画.comより)

 

感想

インドで生理用品を広めた男性が主人公の映画とのことで、「ほう、なかなかニッチなとこ攻めるな」と思いましたが、実在する人物がモデルになっていて、実話をもとにしたストーリーなんだそう。

あんまり想像つかなかったのですが、インド映画好きなのでもちろん観に行きました。

テツコ
泣きすぎて観終わったあと頭痛が3時間くらい治りませんでした。

 

最初のダイジェストカットがグッとくる

インド映画って、音楽が多いのはまあ当たり前なんだけど、その音楽の間にセリフのないダイジェストカットで時間の流れを描き切るっていう演出が多いように思います。

この作品の冒頭もまさにそれなんだけど、素晴らしいんですよ。

音楽は「君の地元が僕の地元になる。僕の喜びが君の喜びになる。君の涙が僕の涙になる。」みたいな感じの歌詞で、夫婦になった二人の幸せを歌ったような歌なんですね。

そこで流れるカットの連続で、主人公ラクシュミが妻のガヤトリをめちゃくちゃ愛してるってことがすっごく伝わってくるんですよ。

玉ねぎを切って泣いている奥さんの涙をぬぐってあげたり、かと思えば、サルが太鼓をたたくオモチャを改造して作った「自動玉ねぎカットマシーン」をプレゼントしたり、奥さんに見とれながら洗濯物をこすっていたら穴が開いてしまったり、奥さんを自転車に乗せるためにサドルの後ろに椅子を作ってあげたり……

このラクシュミの「奥さん愛」と同時に、ラクシュミがアイディアマンであり発明が得意っていう人物造形までをセリフなしで短時間で描き切る手腕。見事でした。

 

映画は二部構成になっていて、前半はラクシュミが奥さんのために試行錯誤してナプキン作りに奮闘するところ、後半は村を追放されたラクシュミがナプキン製造マシーンを発明して世界的に有名になるまでを描いています。

ちなみに、村を出ていくシーンのところでまさかの「インターミッション」の文字が。

休憩時間は特にありませんでしたが、本国の上映ではあったのかなあ。

尺的には137分なのでそこまで長くはないけれど、こういう二部構成におけるインターミッションってなんかいいよね。

個人的には『シン・ゴジラ』なんかでも、ゴジラが停止したあたりでインターミッションがあると楽しいと思う。笑

 

愛する妻のために!その想いが泣ける

話はそれましたが、その前半部分。

愛する奥さんがナプキンの代わりに汚い布を使っていることで、奥さんの体を心配するラクシュミなのですが、ナプキンは当時のインドではとっても高価。(後に言及されるけど、普及率は12%程度だったらしい。)

さらに、「生理は穢れ」とされていて、その期間女性は家に入ったり体に触れたりしてはいけないという慣習。これが十数年前のことって信じられないね。

(ナプキンを買いに来たラクシュミに、薬局のおじさんがまるでワイロのようにレジの下から渡してたのはめっちゃ笑った)

ラクシュミは安い材料でオリジナルのナプキン制作に励むんだけど、それがもう「すべては愛する妻の幸せのため」っていうのがビシバシと伝わってきて、もう泣ける。

でも奥さんには恥ずかしいからやめてと何度も言われ、女性の意見を聞きたいからと医大生に配ったりもするけど誰も相手にしてくれず。

それでも、良いものを作ればきっとわかってもらえる!と試行錯誤を重ねるのですが、ついにとんでもない失敗を起こしてしまい、奥さんは実家に連れ戻され、村からは追放されるような形に……。

 

ただひたすら奥さんのためにがむしゃらになってナプキンづくりに奮闘するラクシュミに対して、誰も理解してくれないし味方になってくれない状況が本当にツラくて涙が止まらないです。

奥さんも周りの女性も理解してくれなくて、こんなに一生懸命になっている人のことを何で分かってあげられないんだ!ってもどかしくなるんですけど、でも女性側の気持ちもわかるんですよね。

「男に生理の何がわかるの!?ほっといて!」となるのは確かに自然だと思うんですよ。

でもラクシュミにとっては、「わからないけど関係ない、愛する妻をただ守りたい!」ってことなのです。このストレートさが本当に心に刺さる。

 

結局奥さんにはわかってもらえないまま、ラクシュミは村を去ることになります。

それでもあきらめずナプキン作りを続けるラクシュミ。

普通の綿とは違う、特殊な素材の正体も突き止めたりしながらついに完成させたのが、「ナプキンを簡単に作れる手動の機械」。

これにより、ナプキンを安価に作って売ることができます。

で、たまたま深夜にナプキンを探していた女性パリーに使ってもらうことに成功。

その感想を次の日に聞きに行くのですが。このシーンが最高。

「ナプキンはどうでしたか?最高・普通・最低のどれ?」

と話しかけるも、女性の反応は「はあ?」という感じ。

「別に普通のナプキンですけど……?」とあっけらかんと言われ、涙を浮かべるラクシュミ。「普通のナプキンと同じところまできたんだ!」って。

この「最高・普通・最低」は、前半でラクシュミが女子医大生に配ったアンケートの項目なんだけど、まあ普通に考えたら「最高」が最高評価なわけじゃないですか。

でもこのシーンでは、「普通」に対してラクシュミが目を潤ませて大喜びするんですよ。

「普通」そのひとことをずっと求めてたんだもんね、って思って死ぬほど泣きました。

あと、機械を見たパリーが「安く作ることができるのね!」と感心するシーンでは、「安く作れるのは、睡眠を犠牲にしてきたから。妻や母親や村を失って、自分の尊厳も失って、借金もしてきたから。」と複雑な表情で語るラクシュミに、それまでのいろいろな苦労や人々の蔑む視線を思い出して、とっても胸が痛かった……。再度号泣。

 

その後はパリーがビジネスパートナーとなって、機械の発明が賞を受賞したり、女性を雇ってナプキンを作って売ったり、機械も各国に売れたり……

ついには国際連合に招待されて、ニューヨークでのスピーチ。

このスピーチが素晴らしい。

通訳をあえて断って、ユーモアも交えつつも自分の信念や女性の尊厳について拙い英語で語る。途中から字幕を読むのをやめました。

 

で、このパリーとラクシュミはなんだかちょっとイイ感じになるんだけど、結局はパリーが突き放す形で、手のひら返して歓迎するラクシュミの村に送り出すんですね。

本当はラクシュミを愛してるパリーが「私と一緒にここに残ったら、彼は変わってしまう。彼には村のほうがいいのよ」と涙ながらに語るシーンは切なかった……。

でもそうなんだよね。もともとは奥さんや身近な人を守りたいと思って始めたことで、富も名声もラクシュミには必要ないのです。

とはいえ、帰ってきたラクシュミを派手なパレードでお迎えする村人たちや、ようやく夫の正しさに気づいて涙を浮かべながら迎えるガヤトリを見て、

テツコ
お前らちゃんと土下座して謝ったのかよ!!

と思わないでもないですし、自分のために必死になってくれてる夫を理解してあげられなかったガヤトリに対して、最初からラクシュミの味方になって手伝ってくれたパリーの方が絶対に良い女じゃないですか。

「そんな女捨ててパリーとくっつけよ!」というムードが劇場中に漂い始めます。(偏見)

でもそこで効いてくるのが、まさに冒頭のシーンなんですよ。

ラクシュミがガヤトリをどれだけ愛してるかってことを、我々はこれ以上ないまでに知ってるわけです。

だから、ガヤトリと再会して笑顔を浮かべるラクシュミを見て、「ラクシュミ……よかったねえ……(泣)」とならざるを得ない。

 

社会問題やヒーローの実話を扱ったノンフィクションベースの物語ではあるんだけど、それ以上にこれが「愛」の話なんだというのが終始貫かれていたのが一番良かったところですね。

ひょっとしたら男性は観に行くのをちょっとためらったりするのかもしれませんが、男性一人で来ている人や、カップルや夫婦で来ている人もたくさんいましたよ。

大丈夫!私は大学生のとき、『テレクラキャノンボール』を女子1人で観に行きましたが、少なくとも必ず仲間はいるのです。

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