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『プールサイド・デイズ』感想(ネタバレ)

あらすじ・キャスト・スタッフ

『プールサイド・デイズ』

2013年/アメリカ/103分
原題:The Way Way Back

監督:ナット・ファクソン/ジム・ラッシュ
製作:ケビン・J・ウォルシュ、トム・ライス
製作総指揮:ナット・ファクソン、ジム・ラッシュ、ジジ・プリッツカー、ジョージ・パーラ
脚本:ナット・ファクソン、ジム・ラッシュ
撮影:ジョン・バリー
美術:マーク・リッカー
衣装:アン・ロス
編集:タティアナ・S・リーゲル
音楽:ロブ・シモンセン
音楽監修:リンダ・コーエン

キャスト:スティーブ・カレル、トニ・コレット、アリソン・ジャニー、アナソフィア・ロブ、サム・ロックウェル

あらすじ
母親の新しい恋人トレントとの関係に悩む少年ダンカンは、夏の間トレントの別荘で過ごすことになる。
トレント一家とまったくなじめないダンカンだったが、ある日オーウェンという明るくひょうきんな男と出会う。
オーウェンの働くウォーターパークでアルバイトをすることになったダンカン。
ひと夏の出会いが、引っ込み思案だった彼を変えてゆく……。

映画.comより)

 

感想

テツコ的鑑賞ポイント

  • プールサイドのロケーション、サム・ロックウェル演じるテキトーな男が最高&最高
  • 大人たちの中で生きる子供の居心地の悪さ、閉塞感
  • 「居場所を見つける」ひと夏の物語に泣ける

 

初めて観たのは確か4年くらい前なんですが、DVDスルー作品で特に話題にもなってなかったし、まったく興味なかったんですよ。

まあ定番のフツウに面白い青春ムービーだろうと特別な期待はまったくせず、友達に薦められるまま鑑賞。

結果。

鑑賞後すぐにブルーレイをポチることになってしまいました。

素晴らしすぎる作品でした。

一生付き合っていく映画ってあると思うんですけど、そんなに本数は多くはない。

でもこの作品は私にとってそのひとつになりました。

初めて観た年以来、毎年夏になると必ずこの作品を観る。というか観ないと夏が来ないと言っても過言ではない。

で、2018年は遅ればせながら8月の終わりに鑑賞しました。ようやく夏が来た。

 

まず、主人公ダンカンが母親の恋人トレント(スティーヴ・カレル!)の別荘に向かう車の中から始まるファーストシーン、もう最悪です。

トレントがダンカンに必要以上に厳しくあたっていて、2人の関係がうまくいっていないのがこの時点で明確。

まあよくある「親の恋人との衝突」的なアレなんですけど、このトレントがクズ中のクズ。

「自分に点数をつけるとしたら何点だ?」「俺がつけてやろう、お前は10点中3点だ!」なんて抜かす最低なヤツです。

短いやりとりだけど、このワンシーンでダンカンがトレントに対して抱く不信感や、些細な一言で心についた傷が伝わってきて……本当に嫌な気持ちになります。

しかもここでトレントがダンカンにこんな威圧的な態度をとれるのって、トレント自身が何か誇れるような偉い人間だからってわけでもないし、ダンカンがどうしようもないダメダメ少年だからでもないんですよ。

トレントが「大人」で、ダンカンが「子供」だから。

たったそれだけの理由で優越感に浸って見下して、いわゆるマウントとってるわけです。

いきなり胸糞悪いスタートです。

 

その後のトレント家でのも、ダンカンは家族や周囲の人たちとのなじめず微妙な感じ。

このへんの会話の心地悪さやいたたまれなさが本当にリアルで見ていてつらくなってくる。

特に、無理やり親睦を深めようと雨の日の昼下がり(このジメジメ具合が閉塞感出してる)にボードゲームをやるくだりも、たかがゲームでムキになって険悪なムードになるのが本当リアルで。

こういう居心地の悪さを描くのは、ノア・バームバック並みにうまいなと思いました。

 

で、こんな閉塞的な「家」との対比として描かれている「プールサイド」のロケーションが最高。

無条件でテンションが上がるし、息苦しくてモヤモヤする「家」との対比がまぶしすぎてもうそれだけで泣ける。

それに加えてサム・ロックウェル演じるお調子者でザ・テキトー男のオーウェンが本当最高なヤツで……。

ダンカンがオーウェンと出会って少しずつ明るくなっていって、プールでバイトしながら「ポップン・ロック」なんてあだ名をつけられて人気者になっていく過程でもうボロ泣き。

スライダーの追い越しというしょうもなさすぎるけど夢がある遊びも最高。

 

で、この作品は、主人公ダンカンを中心に「大人たちの中の子供」という構造を中心に描かれていると思うんですよね。

ダンカンと恋仲になるスザンナも、トレントの甥のピーターも、なんか大人たちの間で苦しそう。

前述の通り、ダンカンは「大人」ってだけで理不尽にキツくあたってくるトレントにいつも傷つけられてる。

大人は身勝手。自分たちの都合で子供を振り回して、自分たちの勝手な感情で子供を深く傷つけたりする。

そうして子供は自分の居場所が分からなくなっていく。

それが子供の視点で終始描かれてるからすごくツラくなってくるんですよね。

 

ただこの映画には大きな救いがあって。

それは、そんな子供たちを理解して救い出してくれる存在もまた「大人」だということ

誰かの価値は決して他人には決められないんだとちゃんとわかっている大人もまた、この作品には登場するのです。それが「プールサイド」側の人間。

冒頭の「3点」のくだりをダンカンがオーウェンに涙ながらに打ち明けるシーンで死ぬほど泣いてしまった。

この「3点」のくだりはファーストシーン以来特に出てこないんですけど、ダンカンの胸の中にはずっと刺さってたんだね、やっぱり傷ついてたんだねとわかるこの涙はつらい。

 

あとはやっぱり、この作品は「居場所」を見つけて行き着く物語なんですけど、「ひと夏の物語」でもあるんですよね。

ダンカンはプールサイドという居場所を見つけるわけだけど、結局は自分の家に帰ることになってしまう。

帰り際、最後にオーウェンのところに行ってスライダーの追い越しを達成して、清々しく帰っていく。

「居場所」は離れたっていいんだなって思いました。

ラストシーンは、ファーストシーンとの対比で帰りの車の中。

違うのは、自分を認めてくれて寄り添ってくれる大人(母親)が隣にいるということ。

完璧すぎるラストカットにまたボロ泣き。

子供の葛藤最高のプールサイド最高すぎる男、そしてひと夏の出会いというコンボで面白くないわけがない作品。

何回観ても死ぬほど泣いてしまいます。これからも夏が来るたびに観続けたい!

 

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