「群像劇」とは、複数の登場人物ひとりひとりに焦点をあてて描き、ひとつの物語として展開していく方式のことを言います。
ひとつの物語を異なる人物の視点から描いたものもあれば、まったく関係のない登場人物たちが何かをきっかけに繋がっていく物語もあったりします。
ひとりひとりに焦点をあてた小さな物語たちが積み重なって、映画全体の大きな物語が見えてきたときの感動が群像劇の醍醐味ではないかなと思います。
今回は、群像劇映画のおすすめ作品をご紹介したいと思います!
群像劇映画おすすめ10選
桐島、部活やめるってよ
監督:吉田大八
キャスト:神木隆之介、橋本愛、東出昌大 など
あらすじ
田舎町の県立高校で映画部に所属する前田涼也は、クラスの中では静かで目立たない、最下層に位置する存在。監督作品がコンクールで表彰されても、クラスメイトには相手にしてもらえなかった。そんなある日、バレー部のキャプテンを務める桐島が突然部活を辞めたことをきっかけに、各部やクラスの人間関係に徐々に歪みが広がりはじめ、それまで存在していた校内のヒエラルキーが崩壊していく。(映画.comより)
邦画の青春群像劇の最高傑作と言ってもいい超王道作品。
「桐島」という生徒が突然部活を辞めたというひとつの小さな事件を中心に、様々な生徒たちの視点から描かれる物語です。
ちなみに、劇中に「桐島」本人は一度も登場しません。(!)
直接登場しないにもかかわらずたくさんの生徒たちに彼が与えた影響が、やがて生徒たちの人間関係を大きく変えるような出来事に発展していきます。
誰もが学生時代に一度は抱えたことのあるモヤモヤした感情が、きっと登場人物の誰かを通して蘇ってくる青春劇です。
⇒『桐島、部活やめるってよ』を視聴できる動画配信サービス一覧
1987、ある闘いの真実
監督:チャン・ジュナン
キャスト:キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ユ・ヘジン など
あらすじ
1987年1月、全斗煥大統領による軍事政権下の韓国。南営洞警察のパク所長は北分子を徹底的に排除するべく、取り調べを日ごとに激化させていた。そんな中、行き過ぎた取り調べによってソウル大学の学生が死亡してしまう。警察は隠蔽のため遺体の火葬を申請するが、違和感を抱いたチェ検事は検死解剖を命じ、拷問致死だったことが判明。さらに、政府が取り調べ担当刑事2人の逮捕だけで事件を終わらせようとしていることに気づいた新聞記者や刑務所看守らは、真実を公表するべく奔走する。また、殺された大学生の仲間たちも立ち上がり、事態は韓国全土を巻き込む民主化闘争へと展開していく。(映画.comより)
軍事政権下の韓国で実際に起こった学生死亡事件とそれにかかわる人々を中心に、その時代に生きた人々の生活や社会問題を描いた物語です。
警察、学生、記者、看守など、さまざまな異なる立場の登場人物たちの視点から、時代風景を繊細に描き出しています。
韓国映画の主役級キャストが集結した豪華さも見どころ。
⇒『1987、ある闘いの真実』を視聴できる動画配信サービス一覧
何者
監督:三浦大輔
キャスト:佐藤健、二階堂ふみ、有村架純 など
あらすじ
演劇サークルで脚本を書き、人を分析するのが得意な拓人。何も考えていないように見えて、着実に内定に近づいていく光太郎。光太郎の元カノで、拓人が思いを寄せる実直な瑞月。「意識高い系」だが、なかなか結果が出ない理香。就活は決められたルールに乗るだけだと言いながら、焦りを隠せない隆良。22歳・大学生の5人は、それぞれの思いや悩みをSNSに吐き出しながら就職活動に励むが、人間関係は徐々に変化していく。(映画.comより)
「就活」をテーマに、何者かになりたい若者たちがもがく姿と人間関係を描いた作品。
社会の中で窮屈な思いをしたり壁にぶち当たったりした経験がある社会人としては、グサッと刺さる部分が多いと思います。
登場人物たちがみんな本当にどこかにいそうなリアルなキャラクターなので、自分に重ね合わせて共感してしまう人も多いのではないでしょうか。
これから就活という人は閲覧注意です。笑
さよなら歌舞伎町
監督:廣木隆一
キャスト:染谷将太、前田敦子、イ・ウヌ など
あらすじ
自らを一流ホテルマンだと偽る、しがないラブホテル店長の徹と、ミュージシャンを目指す沙耶のカップルを中心に、新宿歌舞伎町のラブホテルに集う5組の男女の人生が交錯する1日を描いた群像劇。(映画.comより)
歌舞伎町にあるひとつのラブホテルを舞台に、そこに訪れる客たちや従業員の1日を描いた物語。
ただのカップルだけではなく、ちょっとワケありな2人だったりもする客たちのそれぞれのエピソードが少しずつ展開されていきます。
ラブホテルが舞台ということもあり、それぞれのカップルの事情をちょっとずつのぞき見するような気分で、世の中に存在するいろいろな人たちの生活を垣間見ることができる作品です。
恋人たち
監督:橋口亮輔
キャスト:篠原篤、成嶋瞳子、池田良 など
あらすじ
通り魔事件で妻を失い、橋梁点検の仕事をしながら裁判のために奔走するアツシ。そりがあわない姑や自分に関心のない夫との平凡な生活の中で、突如現れた男に心揺れ動く主婦・瞳子。親友への想いを胸に秘めた同性愛者で完璧主義のエリート弁護士・四ノ宮。3人はもがき苦しみながらも、人とのつながりを通し、かけがえのないものに気付いていく。(映画.comより)
3人の主人公それぞれの物語が代わりばんこに少しずつ展開していく構成。
3人の物語が直接交わるわけではないのですが、同じ世界の別々の場所に存在する彼らの抱える苦しみや痛みには何か共通したものがあり、観ていくうちに感情移入してしまいます。
主人公3人を演じるのは主役級の俳優ではなく、大げさな演出もないドキュメンタリーのようなタッチの映画なので、まるで本当に存在する人物たちのことを見ているかのような気持ちになります。
ラブ・アクチュアリー
監督:リチャード・カーティス
キャスト:ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、コリン・ファース など
あらすじ
クリスマス間近のロンドンを舞台に、英国首相からプータローまで、老人から11歳の少年まで、さまざまな職業と年齢の男女19人が織りなす群像ラブ・ストーリー。(映画.comより)
ラブコメ群像劇の定番。
クリスマスを間近に控えたロンドンで巻き起こるラブストーリーの数々をオムニバス形式で描き、次第に登場人物たちのつながりが見えてくるという構成です。
ハートウォーミングな恋もあれば切ない恋もあり、年齢も性別もバラバラな登場人物たちそれぞれの愛の形が描かれています。
オシャレなロンドンの街並みやクリスマス前の浮きたった空気感も楽しめる、クリスマス前にぜひ観てほしい映画です。
コンテイジョン
監督:スティーブン・ソダーバーグ
キャスト:マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ジュード・ロウ など
あらすじ
地球規模で新種のウィルスが感染拡大していく恐怖を描いたサスペンス大作。接触感染により数日で命を落とすという強力な新種ウィルスが香港で発生。感染は瞬く間に世界中に拡大していく。見えないウィルスの脅威に人々はパニックに襲われ、その恐怖の中で生き残るための道を探っていく。(映画.comより)
人々を死に至らしめる凶悪ウイルスの感染の恐怖を描いたタイムリーな(?)作品。
豪華ハリウッドスターが多数出演し、医者や科学者、記者、主婦などさまざまな立場の登場人物の視点からパンデミックを描きます。
この映画ほどの致死率ではありませんが、実際にパンデミックが起こった現実と重なる描写も多く、なんだか映画の世界のこととは思えません。
サッドティー
監督:今泉力哉
キャスト:岡部成司、青柳文子、阿部隼也 など
あらすじ
二股を解消したい映画監督とその2人の彼女、喫茶店のアルバイトの女の子とマスター、恋人へのプレゼントを買いに行ったお店の店員に一目ぼれしてしまう男、元アイドルを10年間思い続けているファンと、そんなファンの存在を知り会いにいこうと決意する結婚間近の元アイドルなど、さまざまな恋愛模様を通して「ちゃんと好き」とはどいうことかを考察していく。(映画.comより)
登場人物の男女たちの恋愛模様が絡み合っていく様子を描いた作品。
独特なテンポと間が絶妙で、会話劇のリアルな面白さに目が離せなくなります。
誰かが誰かを好きな気持ちが多彩に描かれていて、きっと誰かにほんの少しだけでも共感できる部分があるはずです。
運命じゃない人
監督:内田けんじ
キャスト:中村靖日、霧島れいか、山中聡 など
あらすじ
宮田は、突然姿をくらました元婚約者・あゆみのことを心配するほど人の好い男。そんな彼のため、親友で探偵の神田がレストランで寂しそうに食事をしている真紀をナンパする。意気投合した2人が宮田の家へ行くと、行方知れずだったあゆみが現れて…。(映画.comより)
『鍵泥棒のメソッド』などでもおなじみの内田けんじ監督の巧妙に練られた脚本が光る作品。
登場人物の5人の男女たちのそれぞれの視点からの物語を描いています。
同じ出来事も別視点から見ると、「え、そういうことだったの?」となったり、一見バラバラに見えたエピソードがパズルのピースのようにハマって伏線が回収されていく過程がとにかく気持ちいいです!
ぜひ予備知識を入れずに観てみてください!
マグノリア
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
キャスト:ジェレミー・ブラックマン、トム・クルーズ、メリンダ・ディロン など
あらすじ
死の床で息絶えんとするテレビの大物プロデューサー、彼が昔捨てた息子、プロデューサーの若い妻、看護人、癌を宣告されたテレビのクイズ番組の司会者、彼を憎む娘、彼女に一目惚れする警官、番組でおなじみの天才少年、かつての天才少年……。ロサンゼルス、マグノリア・ストリート周辺に住む、一見何の繋がりもない12人が、不思議な糸に操られて大きな一つの物語に結び付けられていく。そして……“それ”は、起こる!(映画.comより)
ひとつの街に住む12人の男女がそれぞれ抱える苦しみや人間関係を描き、ラストには「衝撃の出来事」が起こります。
3時間と長尺の映画ですが、特に交わることのないひとりひとりの物語を丁寧に描き、それを一気に昇華させるラストに起こる「ある出来事」は、映画史に残る衝撃的なシーンで、一見の価値アリです!
前情報を何も入れずに観て、あの衝撃を体感してほしいです。
個人的には、トム・クルーズがよく分からない強烈なキャラで出演しているのも貴重な見どころです(笑)