黒沢清ファンが黒沢清映画をおすすめしたい
前田敦子主演の『旅のおわり世界のはじまり』が公開中の黒沢清監督。
黒沢清といえば、独特な幽霊の描き方や不穏な空気をまとったホラー作品のイメージが強いですが、ジャンルにとらわれず色々な作品を撮っています。
今回は、自称”キヨシスト”こと黒沢清マニアのテツコが、おすすめの黒沢清映画をご紹介したいと思います。
とはいえ、本当におすすめしたい作品を考えると、DVD化されていなかったりレンタルがあまりなかったりという作品を選びがちなので(『復讐』とか『蛇の道』とか『勝手にしやがれ!!』とか……)
今回は比較的どこでもレンタルできる作品や、動画配信サービスで観ることができる作品を中心にまとめてみました!
黒沢清のおすすめ映画10作
CURE
キャスト:役所広司、萩原聖人、佐久間真 など
あらすじ
ひとりの娼婦が惨殺された。現場に駆けつけその死体を見た刑事の高部は、被害者の胸をX字型に切り裂くという殺人事件が、秘かに連続していることを訝しがる。犯人もその殺意も明確な個々の事件で、まったく無関係な複数の犯人が、なぜ特異な手口を共通して使い、なぜ犯人たちはそれを認識していないのか。高部の友人である心理学者・佐久間が犯人の精神分析を施しても、この謎を解く手掛かりは何も見つからない。そのころ、東京近郊の海岸をひとりの若い男がさまよっていた。(映画.comより)
個人的に、こんなに怖い映画はないです。
幽霊が出てくるわけではないし、殺人鬼に追いかけまわされるような恐怖でもないんですが、得体のしれないものにじわじわと侵されていく恐ろしさが残り続ける作品。
萩原聖人がヤバイです。
ニンゲン合格
キャスト:西島秀俊、役所広司、菅田俊 など
あらすじ
14歳の時に交通事故に遭い、昏睡状態が続いていた豊が10年の眠りから突然覚めた。しかし、彼を出迎えたのは懐かしい家族ではなく、藤森という風変わりな中年男だった。産廃処理業を営む藤森は豊の父・真一郎の友人で、離散した豊の家族に代わって数年前から東京郊外にある豊の家の一部を釣り堀に改造して暮らしているらしい。藤森に連れられて、すっかり変わり果てた家に帰る豊。彼は心のリハビリを兼ねて、かつての友人たちに会って失われた時間を取り戻そうとするが、既に成人している友人たちとの溝は埋められる筈もなく、ひとりやりきれなさに苛まれるばかりであった。(映画.comより)
実は、私の黒沢清ベストにしてオールタイムベストの映画。
中身は14歳の大人を演じる西島秀俊の演技が最高なんです。
家族映画にして、自分の存在を探す物語。
世界一素晴らしいラストカットに毎回泣いてしまいます……。
カリスマ
キャスト:役所広司、池内博之、大杉漣 など
あらすじ
代議士を人質にたてこもる青年から謎のメッセージを受け取った刑事・薮池。犯人も人質も両方死なせるという結果 に終わったこの事件に関する責任問題で、薮池は身を潜めることになる。そして、彼は導かれるようにしてその森にやってきた。森にはひょろりと伸びる1本の“木”があった。実はこの“木”を囲む森では、植林した杉が萎え、根こそぎ倒れていくという奇怪な現象が起こり始めていた。(映画.comより)
森の奥にそびえる1本の不思議な木をめぐる物語。
なんとも説明しがたい奇妙で寓話的な映画で、ひとことで説明できないし簡単には噛み砕けないのですが、とにかくスゴイ。
回路
キャスト:麻生久美子、加藤晴彦、小雪 など
あらすじ
一人暮しの平凡なOLだったミチ。しかし最近、彼女の周囲では同僚の自殺、勤め先の社長の失踪など無気味な事件が相次いでいた。友達が、恋人が、そして家族までが次々と消えていく。時を同じくして、大学生亮介の自宅のパソコンには、インターネットにアクセスしてもいないのに「幽霊に会いたいですか」という奇妙なメッセージが浮かび上がり、黒い袋に覆われた異常な人の姿が現れた。次第に廃虚となる町で、ミチと亮介は出会い、迫り来る恐怖に挑むのだが……。(映画.comより)
これもかなり怖い幽霊映画。
不可解な存在に怯えながら静かに世界の終わりに向かっていく感じが侘しくて、深夜に一人で観ていると自分まで消えてしまいそうになります。
個人的に、本作に登場する幽霊は黒沢作品で一番コワイ。
リアル 完全なる首長竜の日
キャスト:綾瀬はるか、佐藤健、オダギリジョー など
あらすじ
浩市と淳美は幼なじみで恋人同士だったが、淳美は1年前に自殺未遂で昏睡状態に陥り、いまも眠り続けていた。浩市は淳美を目覚めさせるため、「センシング」という最新医療技術を使って淳美の意識の中へ入り込み、彼女がなぜ自殺を図ったのかを探る。センシング中に出会った淳美は、浩市に「首長竜の絵を探してきてほしい」と頼み、浩市はその絵を探しながら淳美との対話を続ける。しかし、センシングを繰り返すうちに、浩市は見覚えのない少年の幻覚を見るようになり……。(映画.comより)
あまり評価は良くないですが、私はどうしても嫌いになれない作品。怪獣映画だと思っている。
段ボールを蹴散らすシーンもあるので間違いなく黒沢清の作品に仕上がっています。
『グエムル』を思い出してしまう。
Seventh Code
キャスト:前田敦子、鈴木亮平 など
あらすじ
東京で知り合った男・松永のことが忘れられず、ロシアのウラジオストクまでやってきた高山秋子。しかし、再会を果たした松永は秋子のことを覚えておらず、「外国では人を信じるな」とだけ言い残して姿を消す。松永の後を追おうとした秋子はマフィアに襲われ、荷物も所持金も全てを奪われてしまう。荒野に捨てられた秋子は何とかして街に戻り、日本人の斉藤が経営するレストランに職住を得て、再び松永を探し始める。そんなある日、店の前を松永が通り過ぎ、秋子はその後を追いかけるが……。(映画.comより)
最新作『旅のおわり世界のはじまり』でも主演を務めた前田敦子が最初に黒沢清とのタッグを実現させた作品。
『旅のおわり』でもそうなんですが、とにかく前田敦子が動くのを見ているだけでなんでこんなに面白いんだろう。
前田敦子はやっぱり単独で映える女優だと思う。
岸辺の旅
キャスト:深津絵里、浅野忠信、小松政夫 など
あらすじ
3年前に夫の優介が失踪した妻の瑞希は、その喪失感を経て、ようやくピアノを人に教える仕事を再開した。ある日、突然帰ってきた優介は「俺、死んだよ」と瑞希に告げる。「一緒に来ないか、きれいな場所があるんだ」との優介の言葉に瑞希は2人で旅に出る。それは優介が失踪からの3年間にお世話になった人々を訪ねていく旅だった。旅の中でお互いの深い愛を改めて感じていく2人だったが、瑞希が優介に永遠の別れを伝える時は刻一刻と近づいていた。(映画.comより)
夫の幽霊と旅をする話。なんだけど、浅野忠信というだけでどことなくホラー色強め。
とにかく最初の浅野忠信登場シーンが素晴らしすぎるに尽きます。
黒沢清映画の永遠のテーマである(と勝手に思っている)幽霊の身体性について追及した作品。
クリーピー 偽りの隣人
キャスト:西島秀俊、香川照之、竹内結子 など
あらすじ
元刑事の犯罪心理学者・高倉は、刑事時代の同僚である野上から、6年前に起きた一家失踪事件の分析を依頼され、唯一の生き残りである長女の記憶を探るが真相にたどり着けずにいた。そんな折、新居に引っ越した高倉と妻の康子は、隣人の西野一家にどこか違和感を抱いていた。ある日、高倉夫妻の家に西野の娘・澪が駆け込んできて、実は西野が父親ではなく全くの他人であるという驚くべき事実を打ち明ける。(映画.comより)
香川照之の恐ろしさや様々な家屋の不穏さなど言いたいことはたくさんありますが、
個人的に最初の10分が最も恐ろしいです。
身震いする悪夢の始まりに背筋が凍る。
ダゲレオタイプの女
キャスト:タハール・ラヒム、コンスタンス・ルソー、オリビエ・グルメ など
あらすじ
職を探していたジャンは、写真家ステファンの弟子として働き始めることになったが、ステファンは娘のマリーを長時間にわたって拘束器具に固定し、ダゲレオタイプの写真の被写体にしていた。ステファンの屋敷では、かつて首を吊って自殺した妻のドゥニーズも、娘と同じようにダゲレオタイプ写真の被写体となっていた過去があり、ステファンはドゥニーズの亡霊におびえていた。マリーに思いを寄せるジャンは、彼女が母親の二の舞になることを心配し、屋敷の外に連れ出そうとする。(映画.comより)
黒沢清がフランスで撮った映画。
古典ホラーのような不気味さがある幽霊映画です。
『叫』のセルフリメイクのような幽霊の描き方。
散歩する侵略者
キャスト:長澤まさみ、松田龍平、長谷川博己 など
あらすじ
数日にわたって行方がわからなくなっていた夫・真治が、まるで別人のように優しくなって帰ってきたことに戸惑う妻・鳴海。それ以来、真治は毎日どこかへ散歩に出かけるようになる。同じ頃、町で一家惨殺事件が発生し、不可解な現象が続発。取材を進めるジャーナリストの桜井は、ある事実に気づく。不穏な空気が町中を覆う中、鳴海は真治から「地球を侵略しに来た」という衝撃的な告白を受ける。(映画.comより)
黒沢清には世界の崩壊が似合うけれど、これは静かな終わりというよりは珍しく慌ただしい終末という点で新鮮でした。
タイトルインがめちゃカッコイイです。
スピンオフの『予兆 散歩する侵略者』もガッツリホラーに寄せてて傑作。(脚本が高橋洋!)