『ドクロゲキ』感想(ネタバレあり)

『ドクロゲキ』のあらすじと感想をまとめました。

『ドクロゲキ』作品情報

『ドクロゲキ 後味の悪いサスペンス』

2012年/48分
監督:三木康一郎
キャスト:黄川田将也、高梨臨、田中要次 など

『ドクロゲキ』は、大人気オムニバスホラー『トリハダ』の姉妹版といった感じで、『トリハダ』と同じようなオムニバス+サイドストーリーという構成になっています。
監督も同じく三木康一郎監督で、「幽霊や超常現象が出てこない」「過剰な演出やBGMがない」という点も『トリハダ』と共通する特徴です。

ただ、『トリハダ』は「恐怖」に重点を置いたホラーオムニバスであるのに対し、『ドクロゲキ』はサブタイトル「後味の悪いサスペンス」とあるように、観終わった後に気分が沈むような「後味の悪さ」をテーマにした作品を集めています。

どちらにせよ、『トリハダ』ファンは必見だと思います!

 

『ドクロゲキ』感想(ネタバレあり)

テツコ
『ドクロゲキ』の各エピソードの結末までのあらすじと私の感想をまとめました。
感想にもネタバレが含まれるのでご注意ください!

サイドストーリー




林(黄川田将也)は盲目ながら幸せの絶頂にいた。自分の障害を理解し懸命に介護してくれる心優しい彼女・麗子と結婚し、娘が産まれたからだ。子供の顔も彼女の顔も見えない林だが、「私に似ちゃってたら不細工になっちゃうから、あなた似で良かった」と語る彼女をそっと抱きしめ、「君に似てたら美人になってるよ」と囁く……。

林の過去がだんだん明らかになっていく。
盲目になった林を優しくサポートしてくれる麗子と親密になった日のこと、それ以前に付き合っていた彼女には盲目を原因に別れを告げられたこと。
そして、視力を失う原因となった事件のこと……。
林の目に硫酸をかけて立ち去った犯人、それはまさに後の妻となる麗子だったのだ。


『トリハダ』シリーズと同じようにサイドストーリーがあったのは嬉しかったです。
このサイドストーリーは、生まれたばかりの子供と妻と一緒に幸せそうに暮らす林という男の過去を、ひとつひとつ時系列をさかのぼって見ていくという形式。過去に何があったかがだんだんと明らかになっていきます。
最後に明かされる事実は戦慄ですが、「今」の彼がこれ以上なく幸福だということが冒頭で描かれているだけに後味の悪さが増します。
あと、視力を失った林が病院の屋上で慟哭するところにエンドロールが流れるという演出はなかなか美しいです。

 

第一話「鮫島由紀恵」




漫画家の鮫島(高梨臨)は依頼されていた原稿の締め切りが迫っていた。どうにか徹夜で書き上げて眠りにつこうとすると、マンションの隣の部屋に住む少女が「ママ、開けて!」とドアを叩き始めた。自分の家と間違えていると思った鮫島は扉の外に向かって「間違ってるよ」と叫ぶのだが、その後もノックが止まない。遂に「うるさい!」と激怒するとノックが鳴りやんだ……。

ようやく眠りについた鮫島だったが、警察の訪問によって目を覚ます。玄関の扉を開けると、目の前には血だまりが。
交通事故にあい、気が動転して大怪我を負ったまま家に帰って来てしまった隣の娘が、鮫島の家の前で息絶えていたということだ。
あのとき、ドアを開けていれば……。


1話目からシンプルにイヤ~なのが来ました。
徹夜明けで疲れていなければ、怒鳴らなければ、ドアを開けて直接言いに行ってれば……
「後味の悪い」話の中でも、この手の「取り返しがつかない後悔」というのが一番最悪な気分になりますね。

 

第二話「横山幾三」




老人である横山(品川徹)は病院で危篤状態に陥った。連絡を受けた息子夫婦と孫がすぐに面会に来る。祖父を心配する孫に、「昔はおじいちゃんのことを間違えてパパと呼んでいたのよ」と祖母は思い出話をする。「容体は安定したが、ほとんど余命幾ばくもない状態。そんな中、横山が「死ぬ前にどうしても言わなければならないことがある」と語り始め、「一度だけ不倫をしてしまった」と秘密を告白する……。

戸惑う妻と息子に、さらに横山は不倫相手との間に子供ができてしまっていたことも告白。
何かに気づいた様子で表情が曇る横山の妻。そのとき、ついに横山は息絶える。
その瞬間、それまで淡々としていた息子の嫁が突然号泣し横山にすがりつく。
不倫相手は息子の嫁で、できた子供というのは孫のことだったのだ……。


正直これは「パパと呼び間違えてた」のくだりでほとんど想像つくので衝撃度は少なめ。というか正直つまらなかったかなあ……。
「実は子供の父親/母親は……」というのも結構使い古された話だし。
おじいちゃん、これはどう考えても墓場まで持っていくべき話だったよね。笑

 

第三話「村上哲也」




村上(田中要次)は長らく音信不通だった父親の家を訪ねるが、インターホンを押しても返事がない。合鍵を見つけて中に入ると、すりガラスの扉越しに父親の姿を見つける。扉を開けようとするが、父親は向こう側から扉を押さえつけて開かないようにする。仕方がないので扉越しに親不孝の懺悔や思い出話、同居の提案を話し始める……。

扉の前にひざをつき、顔を見せてほしいと懇願する村上。
すると父親は突然扉を開けるなり金属バットで村上を何度も殴りつける。
息絶えた村上を見て、自分の息子であることに気づいて泣き叫ぶ父親。
テーブルの上に外して置かれた補聴器。耳の聞こえない父親は、すりガラス越しの息子を空き巣と勘違いしていたのだった。


これは個人的に一番好きなエピソードです!
顔を合わせられず会話もできないけどすりガラス超しに姿だけぼんやり見えているという状況が不穏だし、「扉の向こうにいるのは別人とか……?」という予想も打ち破る衝撃的展開。
何より、親子の確執をほどいていくしんみりいい話ムードになったところで突然金属バットが振り下ろされるという急転回に戦慄する。
そして一話と同じく「取り返しのつかないことをしてしまった」という後味の悪さ。完璧。

 

第四話「畑野のぞみ」




小学生ののぞみ(藤原梨名)のクラスではある日、母親参観で「私のお母さん」について作文を発表することになった。のぞみの作文は「お母さんのいびきがすごい」と言う明るい始まり方だったのだが、段々「仕事を失くした父親が酒浸りになって母親が遅くまで働き、父親は酔った時に母親を殴る」と小学生らしからぬ深刻な家庭事情を語る内容になっていき……。

不穏な内容に表情が曇り始める母親たちと担任。
のぞみの作文は、「お父さんが病気になって寝たきりになったときほっとしました」と続く。
そして、母親が毎日薬を飲ませたけど状態が悪化し父親がなくなったこと、それで母親がパートをする必要がなくなったこと、もうすぐ新しい家に移り住むこと、新しい父親ができることを語る。
不敵な表情を浮かべて教室を立ち去るのぞみの母親。


家庭内での恐ろしい出来事(それ自体は割とありきたり)が「純粋無垢な」少女の作文によって語られます。
母親と担任が最後意味深に見つめ合うというシーンがあるのですが、自分の身の回りにあったことを「うれしい」とか「悲しい」とか単純な言葉でそのまま書き連ねて受容していく「子供たち」と、文面からその裏側をいろいろ想像してしまう「大人たち」の対比がジワジワ恐ろしく感じました。
実際、母親が父親を殺したとか、計画的だったとか、そういうことは一切明らかにされていないんですよね。想像を膨らませてしまった人だけが「後味悪く」なるのです。

 

第五話「内田誠」




妊娠中の彼女と同棲中の内田(弓削智久)は何かと金の無心に訪ねてくる母親に辟易としていた。そんなある日病院から連絡があり、担当医から母親は重度の腎不全で腎移植以外に助かる方法はなく、それを彼女の意思で黙っていたと告げられる。突然の宣告に戸惑う内田は幼少期に母親にほとんどかまってもらえなかったことを恨む一方で、スナックを開いて女手一つで自分を育ててくれた母親への思いと葛藤していた。最終的に腎移植を決意するのだが……。

内田が移植を決意したことを知った母親は、余計なことをするなと激怒する。
しかし、母親を助けたいと語る息子の気持ちを聞いて涙する。
その後、医師は深刻な顔で母親を呼び出し、内田の検査結果を見せる。
なんと内田の腎臓はすでに摘出されており、ひとつしかなかったのだ。
「お店を出すときにお金が必要だったんです」と語る母親。何も知らない息子……。


クズな母親と思っていたけど分かりあえて、でも実はやっぱりクズだったという話。
臓器売買という、かなりタブーな内容なのでかえって戦慄が大きいですね。
母親のスナックの名前が「誠」(息子の名前)というのがまたイヤな感じを出してていいですね。

 

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