2021年から2022年にかけて、日本映画界で最もアツい存在感を放っているのが濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』ですね。
村上春樹の同名小説を原作としたこの映画は、2021年に公開されると、カンヌ国際映画祭を始めとする様々な映画祭で受賞の嵐。
そしてなんと、アカデミー賞で日本映画初の作品賞ノミネート、監督賞としても日本史上3人目というとんでもない快挙を成し遂げ、快進撃は止まりません。
こんなに大変なことになっていますが、おそらく「濱口竜介って誰?聞いたことないな」と思う方も多いと思います。
それもそのはず。濱口監督は、商業映画を初めて撮ったのが2018年で、それ以降『ドライブ・マイ・カー』まで3作品しか発表していない監督です。
ですが、濱口監督はもう20年も映画を撮り続けている、一部映画ファンの間ではもう何年も前から大注目を浴びている存在なのです。
『ドライブ・マイ・カー』をきっかけに濱口監督を知った方、興味を持った方、もっと濱口監督の作品を観たい!という方も多いと思いますが、実は数多くある濱口監督のフィルモグラフィーの中で現在観ることができる作品はかなり少ないです。
この記事では、濱口竜介ファンの私が、現在すぐに観ることのできる濱口作品をまとめました。
濱口竜介監督の過去作品おさらいラインナップ
先述の通り、濱口竜介監督の過去作品のほとんどは鑑賞困難な作品です。
キャリアの大半が商業作品ではないので、ソフト化や配信がされていないためです。
それらの作品は、東京の映画館でたまに特集上映されていたり、過去にCSのチャンネルで放送されたりはしましたが、そういった機会を逃すと二度と観られないかもしれない……というわけです。
その中にもとんでもない傑作がたくさんあるんですけど……
とにかく、今の段階で観ることができる作品は、「配信サービスで観る」「DVDを購入して観る」の2つの方法に限られます。
動画配信サービスで視聴できる作品
まずは動画配信サービスで視聴することのできる作品です。
それぞれの作品の配信サービスについても、リンク先にまとめてあります。
『寝ても覚めても』
キャスト:唐田えりか、東出昌大、瀬戸康史 など
あらすじ
大阪に暮らす21歳の朝子は、麦(ばく)と出会い、運命的な恋に落ちるが、ある日、麦は朝子の前から忽然と姿を消す。2年後、大阪から東京に引っ越した朝子は麦とそっくりな顔の亮平と出会う。麦のことを忘れることができない朝子は亮平を避けようとするが、そんな朝子に亮平は好意を抱く。そして、朝子も戸惑いながらも亮平に惹かれていく。(映画.comより)
濱口監督の商業デビュー作。
キャストは有名な俳優ばかりですし、いろんな意味で話題にもなったので当初から知っている人も多いと思います。
柴崎友香の小説を原作にした作品で、カンヌ国際映画祭に出品されるなど海外でも高い評価を得ています。
商業映画とは言いながら、インディーズ時代からの濱口竜介の色をまったく失うことない唯一無二の恋愛映画になっています。
『ドライブ・マイ・カー』
キャスト:西島秀俊、三浦透子、岡田将生 など
あらすじ
舞台俳優で演出家の家福悠介は、脚本家の妻・音と幸せに暮らしていた。しかし、妻はある秘密を残したまま他界してしまう。2年後、喪失感を抱えながら生きていた彼は、演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島へ向かう。そこで出会った寡黙な専属ドライバーのみさきと過ごす中で、家福はそれまで目を背けていたあることに気づかされていく。(映画.comより)
まさに話題の中心である『ドライブ・マイ・カー』もすでに動画配信サービスで配信が始まっており、DVD・Blu-rayも発売されています。
2022年2月現在でも劇場での公開は続いているし、アカデミー賞の結果次第ではさらにロングランも期待できるので、劇場で観たい方はまだ間に合いますよ!
⇒『ドライブ・マイ・カー』を配信している動画配信サービスまとめ
『スパイの妻』
監督:黒沢清
キャスト:蒼井優、高橋一生、東出昌大 など
あらすじ
1940年の満州。恐ろしい国家機密を偶然知ってしまった優作は、正義のためにその顛末を世に知らしめようとする。夫が反逆者と疑われる中、妻の聡子はスパイの妻と罵られようとも、愛する夫を信じて、ともに生きることを心に誓う。そんな2人の運命を太平洋戦争開戦間近の日本という時代の大きな荒波が飲み込んでいく。(映画.comより)
これは濱口竜介の監督作品ではありませんが、脚本で参加しています。
ちなみに本作品もヴェネツィア国際映画祭で銀熊賞を受賞し世界的評価を受けた作品です。
監督である黒沢清は、東京藝大大学院教授であり、濱口監督が藝大在籍時から関わりがあった、いわば師弟関係。
両者とも作家性が強く感じられる作品を撮る監督ですが、なんとなく通ずるところがあります。
私の肌感覚ですが、黒沢清が好きな人で濱口竜介が好きな人は結構多い気がします。(私も含め……)
DVD/Blu-rayで視聴できる作品
上記に挙げた商業作品は、配信だけでなくDVDなどソフトでも発売されています。
が、『寝ても覚めても』以前の作品はほとんどソフト化はされていませんが、その中でもソフト化されている貴重な作品が2作品だけあります。
『ハッピーアワー』
キャスト:田中幸恵、木村葉月、三原麻衣子、川村りら など
あらすじ
30代も後半を迎えた、あかり、桜子、芙美、純の4人は、なんでも話せる親友同士だと思っていた。しかし、純が1年にわたる離婚協議を隠していたことが発覚。そのことで動揺した4人は、つかの間の慰めにと有馬温泉へ旅行にでかけ、楽しい時間を過ごすが……。(映画.comより)
濱口監督が神戸で行った演劇ワークショップをきっかけに生まれた作品。
キャストも全員ワークショップの参加者、つまり演技経験のない素人です。
最初はそんなキャストたちの演技がぎこちなく感じるかもしれませんが、徐々にそんなことは問題でなくなっていくすさまじく魂のこもった台詞たちに圧倒され、これは信じられないかもしれませんが、5時間越えの長尺なのにまったくその長さを感じさせません。
5時間を観終えた後には、彼女たちと一緒にほんの少し人生を共にしたような、何とも言えない感覚に襲われる、超怪物級名作です。
実は濱口監督の世界進出は『ドライブ・マイ・カー』ではなく、この作品がロカルノ国際映画祭で受賞したことが始まりなのです。
Blu-rayが発売されていますが、ツタヤのサイトで探しても取扱いがなかったところを見ると、おそらくレンタルでの流通はなさそうです。
『PASSION』
キャスト:河井青葉、岡本竜汰、占部房子 など
あらすじ
結婚を間近に控えた一組のカップル。仲間の祝うパーティーの席上で、期せずして男の過去の浮気が発覚する。男と女は別れ、それぞれの夜を過ごす。等身大の20代男女が、夜の横浜を舞台に繰り広げる軽佻浮薄な恋模様、にも形而上学的な愛に関する考察、にも見える。彼らの辿り着いた結論に対して起こるのは感動か、嘲笑か。(DVDパンフレットより)
この作品は、濱口監督が東京藝大大学院の卒業制作として撮った作品。
『PASSION』を含め、2008年卒業生の6作品が収録されているDVDを購入すれば観ることができます。
(ちなみに、『ジオラマボーイ・パノラマガール』などで知られる瀬田なつき監督の作品も収録されてます!)
ざっと探した感じだと、Amazonでは販売されていました。
また、私は新宿の紀伊国屋書店で見かけたことがあるので(『ドライブ・マイ・カー』効果だとは思いますが……)大型の書店やDVD販売店にも売っている場所があるかもしれません。
何にせよ在庫はまだあるということですが、おそらく廃版じゃないかなと思うので、観たい方は急いだ方がいいと思います!
ちなみに私が初めて観た濱口作品がこの『PASSION』であり、この作品に完全にノックダウンされて濱口竜介を追い始めました。やばい映画です。
ますます躍進する濱口竜介に今後も注目!
このように、濱口竜介監督の作品は、手軽に観ることができる作品が非常に少ないのです……
とはいえ、『ドライブ・マイ・カー』に続き2021年に公開された『偶然と想像』もこれからソフト化・配信されるかもしれないですし、『ドライブ・マイ・カー』の快進撃を受けて、劇場でも濱口竜介特集が次々に開催されることでしょう!
これを機に今後過去作品がソフト化したりなんてことも、もしかしたらあるかもしれません。
そして今後も素晴らしい映画を撮り続けるであろう濱口竜介監督の次回作品にも大いに期待したいですね!